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過去のセミナー

演題:「開業して6年、そこで学んだこと」

 

講師:番町オーラルサージャリー&スキャニング院長 

                伊藤 道一郎 先生

日時:平成24年5月19日(土) 午後4時30分〜午後6時

 

場所:熊本県歯科医師会館3階研修室

 

抄録:

 1952 年、ブローネマルク教授によって、骨とチタンの長期的な安定結合・オッセオインテグレーション(オッセオ=骨の、インテグレーション=統合)が発見され、基礎実験に8年、その後、生体反応など徹底的に検証がなされ、チタンが人体の拒絶反応をほとんど起こさないことが確かめられた。 1965年、世界で初めて人体に応用され、そのインプラントは、この患者が亡くなる2006年まで完璧に機能し、全く後遺症などもなかったという。

 近年、インプラント治療は、インプラント体の表面性状の開発、および術式の確立により、適応症の拡大、より低侵襲な手術へと臨床応用され、45 年余にわたる高い治療成績を背景に、また、患者のQOLの向上から一般社会からも認知され、治療を希望される患者さんは増加している。 しかしながら、歯科医師サイドの知識不足、未熟な技術、経験不足のまま、安易な骨移植症例や多数歯欠損症例等の難症例に安易に取り組んだ結果、失敗したと思われるケース、また、手術時間や出血の軽減を目的とする低侵襲手術のフラップレスサージェリーやガイドサージェリーを安易に臨床応用した結果、血管損傷、神経麻痺、他部位への迷入などの重篤なトラブルケースが報告されている。その背景には、経営的に難しい時代であることにより、患者を客としてとらえ、利益重視の間違った誘導、収入源の確保、患者イコール金、という職業倫理の欠如があるのかもしれない。その結果、医療事故や訴訟などがマスコミなどで大きく取り上げられ、患者側の不信、不安、猜疑心を募らせ、歯科医療全体の未来を危うくしているとも言える。

 我々、歯科医師の使命は、患者さんの利益を最優先し、QOL の向上に資することであることはいうまでもない。今後、インプラント療法は歯科医師にとって必要不可欠な治療法の一つとなると考えられ、そんな中、患者さん一人一人の立場に立った、 1020年先を見据えた、患者さんへの配慮ある治療計画が立てられるか!が、 今、歯科医師に求められている。  

 講演では、開院以来、私が、日常臨床でインプラント治療に関連したことで気付いたこと、反省したことを中心に話をさせていただきます。微力ながら、今後の臨床現場のお役にたつことができるならば、大変、幸いに思います。